第2回 三つの専門性で、百寿者の秘密をさぐる ―― 医師編

百寿総合研究センターの調査・研究には、老年内科医、精神科医、総合診療医と、専門の異なる医師たちが加わっています。病院の外来とは違い、住み慣れたご自宅やご入居先という「その方の生活の場」で診察を行うのが、この調査ならではの特徴です。

問診、身体診察、採血、心電図の測定――ひとつひとつは医療現場でおなじみの手技ですが、相手は100歳を超えた方々です。血管が細くもろくなっていたり、長時間座っているだけで負担になることもあり、限られた時間の中でいかに身体への負担を抑えながら必要な情報を得るか、経験と細やかな配慮が求められます。

医師が「百寿者を診る」と言っても、専門性によって見ているものは少しずつ違います。

老年内科の医師たちは、身体の状態とあわせて、バイオマーカーと呼ばれる血液中の指標にも注目しています。百寿研究そのものが遺伝子解析など生物学的な研究と深く結びついており、老年内科医の視点は、その土台を支える重要な役割を担っています。

精神科の医師は、認知機能や精神疾患、性格傾向などに注目した研究を担っています。最近では、がんを経験した百寿者のウェルビーングについての研究成果を発表するなど、心理的な側面から長寿や健康を読み解く取り組みも進んでいます。

総合診療医は、全体を俯瞰しながら診る力が求められる仕事です。訪問診療の経験を持つ医師も多く、住み慣れた場所での診察と相性の良い専門性といえます。介護をするご家族の負担や、治療そのものが本人・家族にもたらす負担について研究している医師もおり、百寿者だけでなく、その方を支える人々にも目を向けた研究が進められています。

それぞれの医師が自らの専門性を持ち寄り、身体への負担を抑えながら丁寧に向き合うことで、一人の百寿者の方を、身体・こころ・生活という多角的な視点から理解することができる――それが、この調査を支える医師たちの姿です。